クプルムの花嫁 1巻 [HARTA COMIX]
漫画 namo
職人の集う金物作りのメッカ・新潟県・燕三条地域を舞台とする職人男子とギャル系女子のピュアで一途な甘々ラブコメディ
このブログで、紹介したことがある「狼少年は今日も嘘を重ねる」の漫画を描いていたnamoによるラブコメである「クプルムの花嫁」の一巻です。
まず初めに、この作品の舞台は日本における金物作りのメッカとして知られる新潟県・燕三条地域となります。
こちらの漫画の評にも書きましたが、管理人が新潟出身・在住であるため、新潟舞台の作品は問答無用で高評価ということを予めご了承いただければと思います(笑)
余談ですが、作者のnamoによる狼少年は今日も嘘を重ねるについては、既に全巻読み終えており、上質なラブコメであったということは先に言っておきたいと思います。
何が言いたいかと言うと、今回のこのクプルムの花嫁も上質なラブコメに仕上がっているということです。管理人の新潟補正がなくともおすすめできる作品ということですね。
さて、長い前置きはこれぐらいにして、クプルムの花嫁の物語について触れていきます。
まずタイトルがこの漫画については、かなり重要なものとなっていて、クプルムというのが聞き慣れないと思いますが、クプルムはラテン語で銅のことを指します。
主人公である鎚起銅器職人の駆け出しである富川修と、その幼馴染で恋人であるギャルっぽい外見と言動をする犬町しいなの二人のラブストーリーとなっています。
鎚起銅器というのは、耳馴染みが無い方のほうが多いと思いますが、一枚の銅板を槌でひたすらたたき、急須ややかん、フライパンなどの一つの銅器を作り上げる技術を指します。
ただひたすら一枚の銅板をたたき・絞り続け、思いのままの形に変えていくこの技術は、一朝一夕で身につくものであるはずはなく、燕三条地域の職人がその技術を常に磨き続けているものとなっています。
熟練の技を持つ職人ともなると、一枚の銅板で凄まじい銅器を作り上げることができますが、修は駆け出しで自分の思うような銅器はまだまだ作れない模様。
そんな場合によっては、ほぼ一日中銅を叩き続ける修ですが、しいなはそんな修のことを愛情を込めて?妖怪銅叩きと呼び、銅をひたすら叩くことに夢中な修が自分にあまりかまってくれないことに若干の不満を持ちつつも、それでいて銅をひたすら叩く修のそのあり方を好ましくも思っているという状況です。
修はまさに職人肌的な印象で、顔立ちは整っているものの、若干人を寄せ付けないようなオーラを出していることが度々あり、感情表現的には不器用なイメージがあります。
しかし、しいなのことを大事に思っていることが、言動の端々から感じ取れるようになっており、まさに二人は相思相愛といったところで、銅を叩いていない状態ではしいなに対してかなり甘々なことを行っていたりもします。
そんな鎚起銅器職人としての修の成長と、徐々に職人の顔つき・考え方になっていく修を密かに支えるしいなとの関係が新潟県の広域を舞台にnamoの独特な優しい筆致で描かれていく作品となっています。
燕三条のグルメや、名物のお店が実名で登場する他、新潟市内の沼垂(ぬったり)テラスと呼ばれる地域に来たり、おそらく新潟県民と山形県民にぐらいしか理解されないであろう、新潟ではかきのもとと呼ばれる食用菊を食べて、無限に食べられる(これはガチ!)と二人に言わせるなど、かなり詳しく取材していることを伺わせる描写が多数出てきており、県民としては嬉しい限りの一作でもあります。
実際に、この連載が始まる前にnamoが新潟日報に取材されていたこともありましたし、また最近では2022年の秋アニメで同じくものづくり地域である特性を活かした、三条市が舞台のアニメ「Do it Yourself!! どぅー・いっと・ゆあせるふ」がタイミングよく放映されていたこともあってなのか、クプルムの花嫁のセカイ展などという企画も最近行われておりました。
Do It Yourself!! ‐どぅー・いっと・ゆあせるふ‐ 1 [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: エイベックス・ピクチャーズ株式会社
- 発売日: 2022/12/23
- メディア: Blu-ray
とにかく丁寧に取材されているなという印象を端々から受ける作品となっていて、燕三条側にもアドバイザー的な方がいらっしゃるということで、非常に好感の持てる作品となっています。
基本的に無愛想だけれど、鎚起銅器としいなに対しては時々情熱的な顔を覗かせる修と、ギャルっぽい見た目ながらも実は一途に修のことを思っているしいなの二人の関係は、読むとニヤニヤしてしまうこと必至です。
2023年次にくるマンガ大賞のノミネート作品にもなっており、個人的に1位ということでランク付けさせていただいてもいます。ハルタ自体は若干玄人向け的な雑誌ではありますが、この作品はもっと注目されるべきかと思いますし、これを期に先のDo it Yourselfの聖地巡礼とも併せて、この作品をきっかけに新潟をもっと知ってもらえたら嬉しいなといち県民としては思います。
なお、コミックの装丁もちょっとした凝り具合で手触りと質感が非常に良いものとなっています。電子書籍では味わえないものなので、この作品を買うときは本の方を買うことをおすすめしたいと思います。
個人的評価(5段階) ★殿堂入り
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