ブラック・ジャック [少年チャンピオンコミックス]
漫画 手塚治虫
漫画の神様・手塚治虫が手掛け、今もなお読み継がれる医療ヒューマンドラマの不朽の名作!
もはや、日本の医療漫画というジャンルを代表する一作であることは間違いない手塚治虫のブラック・ジャックです。
もう今更語るような作品ではないと思うのですが、色々遭って今回取り上げます。
色々のうちの一つは、この作品が週刊少年チャンピオンに新連載として掲載されたのが1973年であったということ。
つまり、今年でこの作品が世に出て50周年。
古い作品なのに、今でも読み継がれ新装版であったり、文庫版が発売されているこの漫画が出てから半世紀が経ったということです。
そんなに前の作品であっても、未だに古臭さを感じないのは、やはり医者と患者という関係性から来るヒューマンドラマが不変的なものであるからでしょう。
そしてもう一つ。御存知の通り、既に手塚治虫氏は鬼籍に入られておりますが、このブラック・ジャックの新作が、なんと生成AIと複数クリエイターの手によって50年経った今蘇るというニュースが報道されていたからです。
生成AIで「ブラック・ジャック」新作を AIの創造性はどこまで人間に迫れるか?
こちらの新作については、ブラック・ジャックが連載されていた週刊少年チャンピオンに、今年の秋頃に掲載される予定になっているとのこと。
個人的にはこの新作には期待半分・怖さ半分ではありますが、新作が連載されたら一度見てみたいと思います。
AIによる手塚氏とほぼ同じクオリティを持つ作画はもちろんのこと、新キャラクターも登場するとのことで、どんな作品になるか興味はつきないところです。
さて、今回ブラック・ジャックを取り上げたのはこの2点が主な原因と言ったところですが、個人的にもこの作品は大好きな一作で、同じ話を単行本で何度も読み返しても、それでも飽きない作品の一つです。
ブラック・ジャック(本名・間黒男)は、子供の頃に不発弾爆発に巻き込まれ、重傷を負い、死んでしまってもおかしくない状況に立たされます。
しかし、名医・本間丈太郎による天才的な外科手術によって一命を取り留めたブラック・ジャックはその体験から本間先生のような医者になりたいという志を持つようになります。
ブラック・ジャックの顔の部分の印象的なツギハギの部分についても、この手術の時にできたものとなっており、ブラック・ジャックのアイデンティの一つとなっているものです。
長じて、敬愛する本間先生に引けを取らない…いや、それ以上の天才外科医になったブラック・ジャックですが、とある理由から頑なに医師免許を取らず、モグリの医者として生計を立てるようになります。
天才的外科医で、どんな難手術でも報酬次第で手術を請け負い、そしてそのほとんどを圧倒的メス捌きで治してしまうブラック・ジャックですが、その時に求める治療費は基本的に法外とも思われる値段をふっかけており、守銭奴という評価もされること度々です。
しかし、ブラック・ジャック自身はかなり情に熱い人間であり、場合によっては手術代を返還したり、あるいは子供のおもちゃ一つで難手術をこなしたりと、全くの冷血漢ではないということも度々描写されます。
手塚治虫は医師免許を持っていましたが、実際に臨床の場にはほとんど立ち会ったことがなかったようで、医療の知識としては、当時としても度々間違った描写があったようです。
実際にそれが問題で、読者からクレームが来たことも少なくなかったとのことですが、手塚治虫にとっては、医療技術を紹介するための漫画ではなく、医師は患者に延命治療を行なうことが使命なのか、患者を延命させることでその患者を幸福にできるのか、などという医師のジレンマを描いたということを語っていたというエピソードがあります。
確かに、ブラック・ジャックについては善人や悪人、果ては宇宙人やミイラなどと言ったとんでもない患者も出てきますが、ブラック・ジャックはあくまで医師として彼らの病状と向き合い医療を施していく。
その手術まで行く過程であったり、ブラック・ジャックとの患者の関わり、あるいは患者とその近しい人との人間模様のほうに重点が置かれた、人間讃歌とでも言うべき作品になっています。
そんな医療のシーンよりも、人との関わり合いを深く描いたヒューマンドラマがメインになっているからこそ、この作品が時代を超えて今も愛される作品になっているのは間違いないことなのでしょう。
今でも根強い人気がある証拠として、先に上げたAIでの新作発表もそうですが、アニメが手塚治虫死後の平成時代に新作が作られたり、手塚治虫の絵柄を真似て、ブラック・ジャックの世界を描いた作品や、全く違う絵柄のスピンオフ作品なども、手塚治虫死後に多数発表されており、今でもその根源的な面白さは色褪せることがありません。
個人的に好きな話がたくさんあり、特にお気に入りの話は何度も読んでいますが、それでも時折読みたくなることがあるほどに、この作品については色褪せない名作だと個人的には捉えています。まさに不朽の名作ということばがふさわしい作品の一つでありましょう。
個人的評価(5段階) ★殿堂入り
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