エルフェンリート [ヤングジャンプコミックス]
漫画 岡本倫
奇才・岡本倫の出世作。現代日本をメインに展開されるダークファンタジーホラー
今現在はパラレルパラダイスという、とんでもない漫画を連載している岡本倫の出世作でアニメ化もされたエルフェンリートです。全12巻で完結済み。
今まで様々な漫画を読んできた管理人ですが、良い意味で衝撃を受けた作品がこのエルフェンリートです。
もう今から20年近く前の漫画になりますが、当時単行本からこの作品を知って夢中になって読んだ記憶があります。
主人公はコウタの愛称で作中では呼ばれているごくごく平凡な男子大学生と、にゅうの愛称で呼ばれる見た目は可愛らしい女の子が主人公となっています。
コウタはどこにでもいる男子ですが、にゅうには一つだけ、普通の人とは違う身体的特長があります。
それが、彼女には2つの角のようなものが頭に生えているということ。
ただこの2つの角については、全く作中では知られていないものではなく新人類「ディクロニウス」と呼ばれる人たちが持っているものとなっています。
ディクロニウスは作中では主に「二觭人(にきじん)」と呼ばれており、人間の男子のみが感染するベクターウイルスというウイルス遺伝子を持った子供が、この特長を兼ね備えるということになります。
2つの角のように見える特長を持つ二觭人(にきじん)は、やはりというか、作中で迫害される存在となっており見た目とその攻撃性から、人間からは疎まれている存在となっています。
コウタが出会うにゅうは、本当の名前はルーシーという名前であり、その二觭人(にきじん)の最初の存在…すなわちイブ的な存在であるということが作中で触れられています。
二觭人(にきじん)には、ベクターと呼ばれる特殊な能力があり、これは目に見えない無数の手のようなものを操れるという能力。
しかもこの能力は普通の人間には見えず、高周波による微振動をベクターに与えることによって、凶悪な殺傷能力をもたせることができる人類にとって脅威的な能力となっています。
二觭人(にきじん)は作中に何人か登場しますが、イブであるルーシーについては、その力を最大限まで発揮すると人類すら滅ぼせる(物理的な意味でと、このベクターに男性が触られるとベクターウイルスに感染させられ、その子供が二觭人(にきじん)となってしまう)力を持っているのですが、コウタとの交流などによって、人類滅亡については回避されるといった話になっております。
全12巻でそこそこの長さの作品ですが、この作品は絵柄的には萌え漫画的な印象を受け、実際にナンセンスなギャグやラブコメ的展開などがあるのですが、それ以上に上記のルーシーや他の二觭人(にきじん)による●人描写などが容赦なく作中に登場することが特徴的です。
特に、途中まで作中の重要人物かと思われていた人物が、自分の身体の秘密を明かした次の瞬間に首を刎ねられて●されているとか、そのあまりにも唐突な展開については、当時ネット界隈でも結構ネタにされていた記憶があります。
古来よりホラーと美少女は相性がいいとされていますが、このエルフェンリートもまた、そんな作品の一つかと思います。
ただ、単純なホラーやバイオレンスだけではなく、前述の通り見た目が人間と違う二觭人(にきじん)に対しての差別であったり、人間の醜さや弱さも描かれている作品で、かなり哲学的な作品であるとも言えます。
連載初期の頃は、絵柄が定まっておらず、前半巻と後半巻では全くと言っていいほど絵柄が違います。
後期のほうが、当然ながら現在の連載している作画のほうになっていますけれど、初期の頃はなんというか素朴な感じがある絵で、こちらの方が好きという人もいるかも知れません。
巧さという意味では、圧倒的に後半巻のほうが見やすく、キャラクターも可愛くなっていますけどね。
また連載途中でアニメ化された作品でも有り、原作が完結していなかったのでアニメでも完全な完結をしたわけではありませんが、1クールでうまくこのエルフェンリートの世界観が収まっているということで、アニメの方の評価も高い作品です。
特に海外での人気が高く、未だに海外でのアニメ好きの間で定期的に名前が上がる作品であったりしますし、また主題歌である百合を意味する『Lilium』については、教会の賛美歌の構成を本格的に突き詰めたところ、海外の教会で実際に賛美歌として各地で歌われているという事実もあります。
ちなみに、歌詞の日本語訳については、作詞者のブログ記事が今でも残っているので興味があればぜひ。
LILIUM 歌詞の意味
というわけで、単行本の表紙だけを見ると萌え漫画なのかな?と思わせ、実際に中を見るとその中には猛毒が仕込まれているというこのエルフェンリート。
確かに重い内容で、時にスプラッタ的な描写も容赦なく紛れ込んでくる本作ですが、そこに描かれている命題と、人間讃歌については、今見ても高いメッセージ性があると思いますので、様々なギャップが生み出す岡本倫ワールドの元祖を是非体感していただきたいと思います。
個人的評価(5段階) ★殿堂入り
エルフェンリート 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 岡本倫
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/08/26
- メディア: Kindle版
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