君と悪いことがしたい 1巻 [少年サンデーコミックス]
漫画 由田果
学校一の嫌われ者で悪役の藤奏志と脇役女子・綿谷まもりの二人の邂逅から始まる淡い青春物語
2023年次にくるマンガ大賞のコミックス部門・ノミネート作品の一つ、由田果による青春ラブコメ『君と悪いことがしたい』1巻です。
引っ込み思案で、地味な見た目の女子・綿谷まもりは生来の気質から常に人から一歩引いたところにいるため、親しい友人もいない気弱な脇役女子。
ただ、彼女は幼い頃にみた戦隊ヒーロー者の影響で、ヒーローよりも悪役に憧れるというちょっと変わった女子。
自分が弱虫なので、悪役が常にヒーローを倒そうという姿勢を見て、まもりは悪役側のほうになれたらと常日頃思っているのでした。
しかし、実際はそんなに都合よくまもりの思うような展開になることはなく、厄介事を断らないからとクラスメイトに頼まれてしまって貧乏くじを引かされることも度々ある状況。
そんな彼女の前に現れたのが、まもりとは対極の位置にいる学校一の嫌われ者となっている悪役・藤奏志。
奏志は割りと見た目は整っているものの、その性格は最悪の一言で、自分の嫌いなものははっきりと嫌いといい、更に学校で問題行動を度々起こし、その悪名はまもりの耳にも届いているほどの人物。
物語のきっかけは、ある夏の暑い日、水泳部の部員から全く関係ないまもりに対して、プール掃除を押し付けられたまもりが一人でプール掃除をしていると、そこに現れたのが奏志。
プール掃除も要領悪く進められないまもりの様子を見た奏志は、話したこともない彼女に対し、プールサイドのまもりの足元にある蓋を開けるよう命じ、更にその中にあるバルブを回せといいます。
初めて面と向かって話す奏志の言う通りにまもりが言われるまますると、プールの水があっという間に抜けてしまうのでした。
なぜ自分に水を抜かせるようなことをするのかと、まもりが奏志に問うと、ただ一言、(プールが)嫌いだからとだけ答える奏志。
奏志は常に杖をつき、身長は低く、身体も華奢でおおよそ病弱なイメージを抱かせる人間であり、プールが嫌いというのは身体的に厳しいのかなという風に類推もされますが、そもそもただ単に嫌いだからという理由でプールの水を躊躇なく抜く奏志に対し、まもりは彼を悪役だと周囲と同じ印象を抱きます。
しかし、今まで自分がやりたくてもやれなかったことを、ただ嫌いだからのとても単純な理由で行った奏志に対し、まもりは学校の鼻つまみ者である奏志に理想の悪役像であると強い興味と憧れを抱くのでした。
そんな導入から始まる、大柄だけど実はスタイルもよく美人なまもりと、複雑な家庭事情を抱えていると思われる奏志との奇妙な関係が始まります。
奏志には、同学年でよくできた晃一という弟がいるのですが、1年で既に生徒会会長候補の彼に対して、半ば悪ガキが行うような、やや稚拙な妨害を彼は弟に対し行うのでした。
しかし、奏志の妨害はすべて弟に見透かされており、奏志は基本的に空回りしているのですが、それでも彼は様々な想いから、晃一に対して一泡吹かせてやりたいという想いから、彼に対して効果的な妨害を行えないかを思案していくことになります。
彼が弟に対してそこまで執着する理由は、かなり重いものがありますが、それはマンガの方を見ていただくとして、実は悪役な奏志も彼なりの境遇と考えがあり、それらの行動をしているということが少しづつ明らかになっていきます。
そんな奏志に徐々に惹かれていくまもりと、奏志自体はまだそのような感情を抱くには至っていない状況ですが、そんな二人がこれからどんな学校生活と青春を謳歌していくのか。
今後がかなり楽しみな一作で、まもりが今後どんな魅力的なヒロインになっていくのか。
そして奏志の過去が今後もっと明かされていくのか。そんなところを追っていきたいマンガです。
個人的評価(5段階) ★5
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