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2016/08/14 青春少年マガジン1978~1983 [少年マガジンコミックス]



作者 小林まこと


全ての漫画読みはもちろん、殺伐とした現代社会を生きる大人全てに読んで欲しい一冊!


2009年は、1959年3月17日に創刊号が発売された
週刊少年マガジンの50周年に当たる記念の年でした。


そこで、マガジンの誌上では50周年を記念して、様々な大御所漫画家による
記念作品が寄稿され、何週かに渡って豪華な読み切りが掲載されました。


大御所漫画家が、1週読み切りの寄稿を行う中で
この作品は、13週連続掲載という短期集中連載という体が取られました。


新潟出身の漫画家・小林まことによる自伝的作品。(余談ですが小林幸子と親戚関係にあるらしい)
彼が漫画家としての全盛期に、少年マガジンで連載を持ち
長いマガジン史の一片のピースとなった記録がここにはあります。



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話は、まず今はいい年になって、風貌だけは凄い貫禄がある状態となった
小林まことの元に、マガジン編集者が訪れ、今回の特別企画に漫画を描いてくれ…
と、依頼されるところから話がスタートします。


日本週刊少年誌4大誌でもっとも古い(サンデーと同じ)歴史を持つ
マガジンの50周年企画の漫画家として選ばれた小林まこと。
さぞ、光栄な話であるかと思ったら…。


楽しかった思い出など無い!


と、訪ねてきた編集者に当たり散らす小林まこと。
もちろん、氏の漫画のスタイルを知っている人であれば
これは、一つのギャグ的描写なのですが、若い読者は面食らうような描写かもしれません。
ただ、この言葉もあながちウソではないことがこの後わかるのですが…。


この漫画のタイトルになっている1978~1983という年号は
作者・小林まことが商業誌でプロ漫画家として初めてデビューした作品
1・2の三四郎」が連載されていた期間になります。
ちなみに、管理人は1981年生まれですので、デビューの頃はこの世に居ませんでしたw


1・2の三四郎というタイトルで検索するとわかりますが
スポ根ギャグというジャンルの作品で、未だに色褪せない
金字塔的作品であると評価が非常に高い一作で、元柔道部の
格闘技マニアであった小林まことの、格闘技を研究したことを彷彿とさせる
動きを感じられる高い画力にも高い評価がされています。


さて、余談が多くなりましたが、マガジン編集者からの依頼を受けた小林まこと。
彼が、1978~1983年までの間、どのような形でデビューし、連載を維持し
そして、ライバルでもあり親友であった2人の作家(後に三馬鹿トリオと呼ばれる)との
交流…そして、別れが赤裸々にこの漫画には描かれています。


冒頭は、1・2の三四郎が賞をとり、そのまま連載デビューへと至るきっかけとなった話。


新潟から単身上京し、賞に入るべくひたすら漫画を描き、持ち込みを続けた小林青年は
ある日、悪いものを食べて食中毒になってしまい、死にかけていました。


そこに電話で、受賞をした旨の連絡が。
あまりの嬉しさに、極度の体調不良も、小林青年は一瞬で吹き飛ばしてしまうのでした。


その授賞式の会場で出会った、ちょっと陰湿な感じも受ける変わった男。
彼の名は小野新二といい、タッチで有名なあだち充の元で
アシスタントをしている若者。彼は、小林まことに次ぐ賞を取って入選を果たしたのでした。
しかし、小林まことが居なければ一番をとっていたはずと言われてもおり
2人は出会った当初はライバル関係ということになります。


そこにもう一人、大和田夏希という同期の若手漫画家が加わり
小林まこと・小野新二・大和田夏希の三人は、漫画という職業上のライバルでありながら
私生活では、同時期に連載をマガジンで持っている戦友として濃密な親友関係を築くに至るのです。


全盛期は、マガジン誌上の最後の作者コメント欄でお馬鹿なやり取りを行ったことから
新人三馬鹿トリオとして、当時の読者の間で有名となりました。
そのやり取りの例が、少しだけ掲載されていますが、いま見てもかなりフリーダムな内容ですw


しかし、漫画家という職業は過酷です。
特に週刊連載は締め切りが厳しいという話は、マンガ好きでなくても
周知の事実かと思いますが、基本遅筆な小林まことは、その容赦無い
締め切り地獄に身を投じることになります。


週刊連載のスケジュールを見ながら、自分のペースで筆を進めると
次眠れるのは5日後…という試算が。そして事実そうなる厳しさ。
寝るのも、食事を取るのも、挙句トイレに行く時間までも惜しいという
壮絶な締め切りラッシュに、徐々に徐々に小林まことは追いつめられていきます。


そして、その状況は他の小野・大和田も同じ。
連載の過酷スケジュールに加え、読者アンケートの容赦無い感想など
次第に、彼らも精神を追いつめられていきます。


最終的に、小林まことは家のベランダから飛び降り自殺をしたくなる状況になり
(手すりを離したら飛んでしまうという強迫観念)小野新二は酒好きから肝臓をやられてしまい
大和田は、階段の手すりに掴まっていないとそのまま落ちてしまう…といった深刻な状況になります。


最終的に、新人三馬鹿トリオとして仲が良かった3人は
大和田夏希の自殺・小野新二の病死という悲劇の結末を迎えてしまうのです。


しかし、それと同時に、作中には同時期を駆け抜けた、戦友とでも言える
漫画家の交流も深く描かれており(今現在も活躍する漫画家も多い)
小林まことは、漫画家になれて仲間に多く出会えたことが一番良かったとも語っているのです。


最終的にみれば、世間での人気とは裏腹に順風満帆とも言えなかった
小林青年の漫画家生活は、1・2の三四郎の完結という形で、一旦終わりを迎えます。
その後は、連載を様々なところで持っていましたが、この週刊連載が一番辛かったようではあります。


文章で描くと、三馬鹿トリオの顛末は悲劇以外の何者でもなく、普通に描けば
非常に重くなる話であることは間違いないのですが、所々にギャグを混ぜる小林まことの作風から
これらの事実は、極端に重くならず、むしろ淡々と描かれており、当事者である小林まことの
恨み節ですとか、冒頭のシーン以外で全く感じられることはないのです。


これだけの連載をさせられ、仲間も失った小林まことの心境はもちろん
本人しかわかりませんが、これだけの話をものすごく重くならないように
描いている(おそらく意図的にではなく自然にこうなっているのでしょう)
小林まことの力量に唸らされる作品となっています。


漫画の終わりに、この作品は天国に先に旅立ってしまった
小野新二・大和田夏希の親友に捧げると小林まことは明言しています。
そうです。この漫画の主役は、小林まことではなく、小野新二と大和田夏希の2人であり
小林まことは、一種の狂言回し的役割だったということが最後で分かります。


今、大和田夏希・小野新二という漫画家を知る若い人はごくごく限られた人でしょう(私も知りません)
しかし、今現在連載を持っている漫画家も、果たして30年後に覚えられている漫画家はどれだけいるのでしょうか。
小林まこととしては、同年代に共に時代を駆け抜けた2人の親友を、忘れてほしくないという想いがあったのだと思います。


漫画家の自伝的な話として、今現在漫画家であったり、或いはこれから漫画家になろうとしている人。
自分のような漫画読みはもちろん、全ての殺伐とした現代社会を生き抜く大人に、読んで欲しい一作です。
この作品から気力を貰える人は多いはず…と、個人的に信じて止みません。

個人的評価 殿堂入り

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