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2017/01/06  ナナマルサンバツ 1巻 [角川コミックス・エース]




漫画 杉基イクラ


少年はクイズと出会い変わる…クイズにまみれた青春部活物語!


遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。
去年は、久しぶりにやる気を出して、半ば放置中だったこのブログを
また更新しようという気になり、頻度を上げましたが、今年はもっと
新旧あわせて、様々な漫画の感想を更新できたらなと思います。
読者は少ないでしょうが、楽しみしてくださっている方がいると信じてやれるところまでやります。


さて、2017年の一発目の更新は何にしようかと考えていましたが
アニメ化されることが、決定した杉基イクラによる青春部活漫画である
ナナマルサンバツ」を新年一発目にしたいかと思います。
この漫画は個人的にイチオシなんです。


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漫画の感想に入る前に、この漫画の背景といいますか、題材について少し解説しておきます。


今の若い人は、多分知らないと思いますが、私が子供の頃(私は次の誕生日で36歳になります)は
視聴者参加型の、クイズ番組っていうのが多く放送されていました。
民放やNHKで、そんなクイズ番組が各局に一つはあったんですね。


例えば、テレ朝系列でいえば、クイズタイムショックや100万円クイズハンター。
あと、今でも放送が続いている、アタック25とか。フジで言えば、これはまだ記憶にも新しいと思いますが
クイズミリオネアとか。TBS系でいえば、アップダウンクイズやクイズ100人に聞きました、直接回答はしないですがクイズダービーとか。NHKにはクイズ100点満点といった番組がありました。


そして、その視聴者参加型クイズ番組で最大級の規模を持っていたのが
一週だけでは全て放送ができず、10週ぐらい連続でパート部分を細切れに放送していた
読売テレビ系列の、アメリカ横断ウルトラクイズ。その血脈を受け継ぐのが高校生クイズでしょう。
これは、今でも毎年夏に放送が行われていますよね。


しかし、これらの視聴者参加型クイズ番組というのは、今ではほぼ絶滅危惧種となっています。
様々な理由はあると思いますが、クイズ自体の人気も低迷しているのかもしれません。
でも、高校生クイズをご覧になった方はご存知かと思いますが、知力を争うクイズは
一定の競技人口があるのは間違いないようです。


このナナマルサンバツは、その高校生クイズを下地にして物語が作られていると思われます。
舞台は文蔵(ぶぞう)高校という高校。文蔵に新一年生として入学した越山識(こしやましき)が主人公です。


高校入学二日目、恒例行事とでも言えば良いのか、新入生を入部させようとする
部活動の勧誘が盛んに行われています。野球部やバスケ部やテニス部などの運動系の
定番部活動の他にも、書道部などといったいわゆる文化系の部活動も熾烈な勧誘活動を繰り広げています。


識は、基本的に内気な少年であり、どこか他人事のように部活動の勧誘活動を見ています。
そんな識に対して、突然メガネをかけた、一見頭の良さそうに見える先輩が、熱弁しているのを見ます。


笹島と呼ばれるその人物が熱く語っているのは、クイズ
クイズ研究会を名乗り、誰でも知っている万国共通の遊び…クイズの楽しさを熱弁しているのでした。
そして、キミもクイズ王にならないか!と識に、無理やりクイズを集めたペーパークイズを渡すのでした。


中学時代、全く目立たなかった彼がしていた仕事は図書委員。
3年連続図書委員であり、放課後は友達などと遊ぶことはほとんどなく
ずっと図書室にこもって、クラシカルな文芸作品やノンフィクションを
ただひたすら読むだけの放課後…、いわば「本の虫」です。


周りが、新たな高校生活に色々と思いを巡らせている中、識は何とも浮かない状況で
新たな高校生生活を始めようとしています。色々と考えているのも、アレなので
その時間を使って、笹島に渡されたペーパークイズを1人解き始めるのでした。


クイズについては、非常に簡単な常識的問題からマニアックな問題まで配置されており全50問。
そのクイズについては、見開きを使って全て読者にも分かるように掲載されています。
実際にやってみて頂きたいのですが、私でも半分は分かるような問題です。


全ての問題を結局、解答してしまう識。その時、クラスでは各種委員決めが行われており
識は、図書委員会になりたかったものの、生来の引っ込み思案がたたって、立候補できず
クラスメートの井上に、図書委員をとられてしまうのでした。周りからも識がやりたかったことは
バレバレだったようで、それについてちょっとしたヒソヒソ話をされてしまいます。バツが悪くなる識。


男女各一名ずつの図書委員。女子の図書委員を決める時に、さっと手を挙げた女子が1人。
彼女の名前は深見真理(ふかみまり)可愛いルックスを持ち、クラスでも
見た目の良い女子として、評されているようです。


堂々と手を挙げた彼女の様子に、自分もあれぐらい積極性があれば…と
半ば羨望の眼差しを送る識。しかし、彼女は既に密かな人気があるようで
周りの嫉妬にさらされることもないと、半分ホッとした気持ちも抱えるのでした。


その日の昼休み、教室でぼっち飯となってしまう識。
周りの目線に耐えきれず、1人図書館に向かい、本棚の陰でぼっち飯を堪能します。


ご飯を食べながら、気になるのはやはり高校の図書館の蔵書。
中学校から比べれば、マイナーな作品のシリーズも揃えてある
高校の図書館に、充実した表情を1人浮かべる識。


そこに、何故か真理の姿が。
どうやら、図書委員の仕事をしているようですが、彼女は本棚の下の方で
座ってご飯を食べている識に気づきません。そして、識に気づいたときには時既に遅し。
識の足に引っかかってしまい、盛大に転んでしまいます。挙句の果てに識にパンツを見られる羞恥プレイ。


恥ずかしさに顔を赤らめながら、そのまま識の前から去る真理。
真理にとっては散々ですが、この騒ぎを聞きつけた図書館の先生が
識の昼飯を咎め、識も慌てて移動するハメに。識にとってもある意味不幸が襲ってきます。


しかし、彼女が倒れた後に、その場に残していったものに
笹島がくれたペーパークイズがあります。真理もクイズやっているのかな?と
好奇心に負けた識が、彼女が持っていたペーパークイズを見ると、そこには何やら多数の謎の印が、各問題分につけられているのでした。


放課後、新入生に向けた各部活紹介が体育館で行われます。
最初は、正式な部活動の紹介。そちらはつつがなく終了。
その後、同好会となっている部員5人未満の部活の紹介が始まります。
5人以上の部員が集まれば、正式な部に昇格するため部長は必死です。


そこで、最初の同好会の発表として現れたのは、あの笹島。
笹島学人(ささじまがくと)が本名であり、2年生で現クイズ研究会会長という
立場で、彼はさっそうと壇上にあがります。そして開口一番


ニューヨークにいきたいかぁぁぁーー!!!


と、絶叫するのでした。これは、先にも紹介した
実際のクイズ番組、アメリカ横断ウルトラクイズで出題リポーターが
クイズが始まる前に、叫ぶ名文句です。(出題リポーターは福留功男→福澤朗が務めています)





ちなみに、小さなフキダシでジャストミートもあるとか言っているのが笑えますがw
このあたりは、おっさん世代ではないとわからないですね。


彼が部活紹介で、行うのは即席クイズ大会。
6人の解答者を募り、クイズで競おうというものです。
早速、新入生に向かってやりたい人を挙手で募る笹島。


そこで、3人の生徒が我先にと解答者への名乗りを上げます。
その中には、あの真理もいるのでした。


その様子をみて、再び尊敬の眼差しを密かに送る識。
3人の立候補者はすぐ現れたものの、残り3人が現れないため
適当に組と出席番号を組み合わせて発表していく笹島。
その出席番号で、運悪く識が選ばれてしまうのでした。


ただでさえ、内気で目立つことが苦手な識。
雰囲気に飲まれたまま、クイズ大会は始まってしまいます。


適当に問題を出していく笹島。
簡単な問題もあれば、最後まで問題文を聞かないとわからないひっかけ問題もあり(答え自体は簡単)
なかなか一筋縄ではいきません。問題を見通す想像力を働かせることも必要だと力説する笹島。


何問か常識問題や、ネット問題が出たところで、突如真理が謎の本気モードに入ります。
髪の毛を半分ほどかきあげ、左耳が露出した状態で集中モードに入った真理。
その後は、問題文を全部読まれずとも、早押しで次々と解答していくのでした。
その姿に、クイズは継続中にも関わらず呆気にとられる識。


もはや、真理の独擅場となったその舞台で、識はあることに気づきます。
まるで問題が分かっているかのような解答をしている、真理を見ていると
図書室で会った時に見た、ペーパークイズの問題文につけられていた印を思い出したのでした。


すなわち、真理がつけていた印は、解答が確定する問題文の場所であったということ。
僅かな手がかりを元に、クイズの奥深さを垣間見た識。次は自分が答えてみたいと思うのでした。
そのためには、まずは何が何でも早押しで解答権を得ること。答えはその間にも考えることが出来る…と識は考えるのでした。


そこで、笹島が難問であると断った上で、とあるクイズを出します。
彼が読み上げた問題文は…


“恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった。“


と、ここまで問題を読んだ瞬間に、識がボタンを初めて押します。
解答権を初めて得た識。この問題は、さすがの真理もわからない様子。


初の解答権を得たものの、問題文は小説の一節と思われる一文。
ただ、この一文に識は覚えがありました。そこで、彼はすごい速さで思考を始めます。
この手の問題文については、ペーパークイズにも同じ形式の問題があり、おそらく文学作品の作者かタイトルを答えさせるものであると。
しかし、どちらを解答すればいいのかは問題文が読まれていないのでわかりません。
そこで、識は笹島が言った「難問」という言葉を頼りに…


ダス・ゲマイネ


という、太宰治の文学作品を解答するのでした。
そして、見事正解!時間が押したため、この問題が最後となり
最後の問題に解答した識に、笹島は会場からの拍手を促すのでした。
その今まで、味わったことがない感覚にしばし呆然とする識。


ちなみに、問題文全文は「“恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった。“ この一節で始まる太宰治の文学作品のタイトルは何?」だったとのこと。


部活動紹介が終わったあと、識のもとに真理が現れます。
そして、真理は識の数問問題を体験しただけで、クイズのコツを理解した
頭の回転の速さと、本の虫で得た膨大な知識量を理由に、識をクイズ研究会に
一緒に入ってクイズ王を目指そうと誘うのでした…。


というわけで、ストーリーの導入部分を書き出してみましたが
まず、杉基イクラの描く真理が可愛いですね。後でわかりますが
彼女は、馬鹿がつくほどのクイズ脳で、実は結構抜けた天然なところがあるということ。


識も、自分が持っている知識がクイズでは役立つこと。
そして何より、クイズの楽しさに完全に魅了されてしまったことが描かれています。


識はクイズ研究会の部員であると共に、クイズのことを知らない読者に対して
真理からのクイズ用語を、わかりやすくアウトプットしてくれる役でもあります。
ベタ問と呼ばれる、クイズではある種定番の問題のことや、解答確定ポイントなど
クイズに興味もない人にとっては、新鮮であろう内容となっています。
(※管理人注 ベタ問には、例えば「なぜ山」と呼ばれる、「なぜ山に登るのか」と聞かれ「そこに山があるから」と答えたエピソードで有名な、イギリスの登山家は誰?→ジョージ・マロリーという問題があり、これは「なぜ山」と読まれたら、マロリーと即座に答える一種のジョークのような問題であるとのこと)


人間だけが楽しむ知的遊戯の究極系とも言えるクイズでありますが
この漫画を見ていると、早押しについての技術が解説されているので
実は、隠れスポーツ系の競技なのではないかと個人的に思います。
少なくとも、問題文を聞き取り早押しする際に発揮する集中力は
ある種スポーツに通じるところがあると思います。


その辺りのクイズの魅力を丁寧に解説・描き出しており
単なる知識だけを得るための、漫画になっていないところがいいですね。
今では視聴者参加型クイズ番組が殆ど無いので、メジャーなところで発揮することは
ほぼ皆無と思われる競技ですが、高校生クイズは今でも好評を博していることから
これから、高校生になってクイズ大会に出たいと思っている高校生には良い指南書になるかもしれません。


かくいう私も、実は雑学などを知ることは非常に好きなことでして
某雑学番組の冒頭で紹介されていた、SF作家・アイザック・アシモフが言う


人間は無用な知識が増えることで快感を感じることができる唯一の動物である


という一節に非常に共感出来る人間であり、また実際にクイズゲームなども
一時期すごいハマっていた時期があります(QMAとか)


誰でも出来るけれど、非常に敷居も高いと思われる競技クイズを
これからどれだけ杉基イクラが描き出していくかに期待です。
冒頭にも書いたとおり、アニメ化も発表されている作品で、これはアニメ映えする作品だろうなと個人的には思っています。実際の放送が始まったら、これはアニメも視聴したい作品ですね。


余談ですが、タイトルのナナマルサンバツは、競技クイズの形式としては良くある形式の一つで
7問先取で勝ち。3回のおてつき(不正解)で、失格になるというルールから来ているようです。


個人的評価(5段階) ★5




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