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2016/11/01 灰と幻想のグリムガル 1巻 [ガンガンコミックスJOKER]




原作 十文字青
作画 奥橋睦


突如ファンタジーの世界に呼ばれた男女12人の等身大の冒険譚。 異世界の過酷な現実に、死に物狂いで生き残れ!


2016年1月~3月期にアニメ化もされた、十文字青による
ライトノベルである「灰と幻想のグリムガル」をレビューします。


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目覚めよ…という呼び掛けと共に、暗い洞窟のような場所で目を覚ましたのは
何の変哲もない普通の青年(年齢は不明ですが高校生~大学生ぐらいと感じます)であるハルヒロ


一体、なぜ自分がここにいるのか?ワケのわからないまま、ハルヒロが状況を把握しようとすると
自分の周りにも、おそらく自分と同じ境遇と思われる11人の男女がそこには集まっています。


お互い、面識も無く全くもってバラバラな12人ですが、誰か一人が暗がりの洞窟を照らす
灯りが規則的な配置で並べられていることに気づきます。


灯りにそって歩いてみようという誰かの提案によって、ハルヒロも皆に遅れまいと
彼らの行進に参加し、あるき始めるのでした。


暫く歩いていくと、微かに外の明かりが。誰かが外に出られるぞ!と叫んだとき
12人の男女の前に、信じられない光景が展開されます。


地球の月とは違い、赤い月が浮かぶ謎の世界。
明らかに自分が今までいた場所とは、異質な世界に皆戸惑います。


誰一人、状況が把握できない一行の前に、突如能天気な雰囲気の女の子が登場。
ひよむーと名乗る、その案内役は、この世界をグリムガルと紹介し
彼らに自分についてくるようにと同行を促すのでした。


しかし、彼らもまだ自分の境遇を把握していないため、あまりにも唐突に登場した
ひよむーに不信感を抱きます。果たして、この女の子は信用できるのか?


皆が迷っていると、ひよむーはなかなか決断を下せない一行に


あまりここで時間を食うと、死んでしまうこともあるのです


と、物騒な言葉を投げかけるのでした。


真偽はどうあれ、流石に命がかかっているのでは一行も従うしかありません。
そこで、彼女に戸惑いながらもついていくことに。


ひよむーに導かれるままに一行が歩いていくと、大きな城壁に囲まれた都市
城塞都市オルタナに一行は案内されるのでした。


そこに広がる世界は中世のありきたりのファンタジー世界のような世界。
その壮観な景観に、一行は驚くのでした。


そして、誰かがオルタナをまるで「外国のようだ」というのですが
その時、国とは一体どんな概念だったのか?思い出せないことに気づきます。
ここで、一行の一人であったある男が一言「今さら気づいたのか?」といいます。
曰く、自分の名前以外の事が、一切思い出せないと。そして、それは一行皆同じ。言われて気づいたようです。


現状が把握できないまま、ひよむーが連れてきたのは、とある酒場と思われる建物。
看板にはかすれた文字で、義勇兵レッドムーンと書いてあるようです。


その建物から出てきた、オカマのような言葉づかいと容姿を持つマスターが登場。
ひよむーが連れてきた、12人の若者に、この世界の現状を唐突に語るのでした。


この赤い月が登る世界は、グリムガルと呼ばれており
人間とその他の種族やモンスターが戦っている世界…まさにファンタジーの世界になっているようです。


そして、城塞都市オルタナでは義勇兵団レッドムーンを結成しており
魔物と戦う有望な若手を常に募集しているとのこと。


この世界に連れられてきたばかりのハルヒロ達一行は、義勇兵団に入ることを
半ば強制的にさせられます。なぜならば、彼らがこの世界で生きて行くためには
現実世界と同じように、お金を稼ぎ、毎日の宿や食事を確保しなければいけないためです。
突如、連れられてきた異世界で、まさかの傭兵稼業。現実は厳しい。


更に厳しいのは、今まで何も戦闘などすることを無かった彼らが
見習い義勇兵として、戦場にまでいかなければならなくなったということ。
オカマのマスターは、最初の準備資金は渡しますが、それ以降はすべて
自分たちの食い扶持は、自分たちで稼げというスタンスのようです。
この世界で、彼らを助けてくれる人はいないのです。


こうして、グリムガルで突如義勇兵になることを運命づけられた12人の若者たち。
この中で、人を引っ張るリーダー格は2人。いかにも屈強そうな男である
レンジと、人当たりのよさそうなマナトの2人。


レンジはさっさと、自分が気に入った者を数人選別し、さっさとパーティを組んでしまいました。
そして、マナトも残った者でパーティを組み始めますが、ハルヒロは上手く最初は
パーティに入ることが出来ません。しかし、ハルヒロの戸惑いを察したマナトは
上手く、ハルヒロをパーティに入れることにします。ハルヒロはそんなマナトを尊敬と羨望の眼差しでみるのでした。


ハルヒロが組んだパーティは5人。この世界では、義勇兵になるためには
どこかのギルドに所属する必要があるということ…ゲーム風に言えば職業ですね。


ハルヒロが入ったのは盗賊ギルド。ギルドに所属するにもお金がいる世知辛い世界。
盗賊ギルドは、入るのも抜けるのも自由ですが、ギルド内には盗賊ギルド同志でのみ
通用する(ギルド外の人間に教えてはいけない)通り名があり、ハルヒロの通名は
「年寄り猫」(オールドキャット。ハルヒロの師匠になったバルハラ(♀)が付けた通り名で、ハルヒロの目が年老いた猫のような眠そうな目をしているからだとか)と言う名前がついています。


他のメンバーはと言うと、マナトは神官のギルド。狩人のギルドに入ったユメ。
魔法使いになったシホル。そしてなぜか暗黒戦士になったランタ。
パーティのバランスとしては、神官・戦士の存在は鉄板のようですが
何故かランタが暗黒戦士になってしまったことで、パーティ内のバランスが微妙なことに。
暗黒戦士を選んだのも、かっこいいからという理由のようです。中二病のトラブルメーカーという立ち位置ですね。実際に、この後もパーティ内で様々な軋轢を生む原因にもなります。


ランタが皆から総ツッコミを受けている中で、同じくこの世界に呼ばれた
気弱な長身の男、モグゾーが一人で居るところをマナトたちのパーティに見つけられます。
どうやら、他の義勇兵に連れて行かれたものの、トロいからという理由でパーティから
抜けさせられたようです。また、お金などの荷物も持って行かれたとのこと。


たまたまモグゾーが戦士だったということで、ちょうどハルヒロたちのパーティの
欠けたピースを埋める存在となり、ハルヒロたちはモグゾーをパーティに迎え入れます。
これで、バランスがそこそこ整ったパーティが完成。いよいよ義勇兵として活動が始まります。


しかし、現実は甘くなかった。パーティを組み、それぞれ7日間、ギルドで簡単な修行は積んだものの
彼らは、この世界では駆け出しの義勇兵。その現実は、彼らを絶望へと誘います。


ハルヒロの最初の義勇兵の活動としては、異形のモンスター…ではなく
穴鼠という、ハリネズミのようなモンスターの駆逐。
なんだショボイ相手だな…と思えますが、この世界に突如連れてこられた
新米冒険者達にとっては、穴鼠の駆逐すら一苦労。


パーティ感の連携も取れず、思わぬ反撃を受け焦るハルヒロ一行。
RPGのファンタジーの世界では、最初から主人公たちは剣や魔法を
ある程度使いこなしていたりするわけですが、この作品ではそうはいかないようです。
ここで単行本の帯に書いてある紹介文「等身大の本格異世界冒険譚という
謳い文句に納得させられることになります。ハルヒロ達は、この世界では最弱に位置するパーティなのです。


この世界の現実はとにかく苛酷。食い扶持を確保するための義勇兵の最低限の仕事は
しなければいけないのに、自分たちは弱すぎて、常に死と隣合わせ。
この世界で生き残るためには、それでもやるしかないのです。


しかし、そんな新米パーティでも何回かクエストを行えば
それなりに自信がついてくるようで、何とか仕事をこなし
以前よりも戦果をあげることが出来るようになってきます。


そして、ある程度自信がついたと思われる時に、パーティリーダーのマナトから
いつもと違うところで、クエストを行わないか?との提案が。
皆、自分の実力がついてきたことを実感していたようで、マナトの提案に乗ることに。


マナトが提案した新たな場所は、ダムロー旧市街と呼ばれる廃墟。
現在は、人の姿は無くゴブリンたちの縄張りになっているようです。


ゴブリンといえば、ファンタジー世界の雑魚敵として、ゲーム好きで
RPGをやったことがある人であれば、名前が分かるモンスターかと思います。


しかし、彼らにとっては異形のモンスターは、敵としては警戒が必要。
RPGゲームのように、サクっと倒すわけにはまだまだいかないのです。
しかし、彼らは3匹までなら最近は狩れるようになっています。


ダムロー旧市街についた一行は、早速盗賊のハルヒロに偵察を命じます。
そしてハルヒロが見たのは…いつものゴブリンと、そして初めて見る大きなゴブリン。


マナトによれば、大きなゴブリンはホブゴブリンと呼ばれる亜種となり
ゴブリンに比べて実力があるゴブリンであるといいます。
果たして、今までの相手とはちょっと違う相手に一行はどうするのか?


皆で検討した結果、相手は二匹であることから、イケるとの満場一致。
ただし、相手は見たことがないホブゴブリンでもあることから、奇襲をかけることに。
各自の動きを慎重に打ち合わせし、戦いを挑むことになりますが…結果的にこの決断は
取り返しのつかない結果を招くことになります。


全員で合図を元に、まずは盗賊であるハルヒロと狩人のユメが
ホブゴブリンの注意を惹くために背後より先制攻撃。


…のはずでしたが、2人の気配にいち早く気づいたホブゴブリンは
瞬時に振り向き2人を察知。そのまま、素早い動きで手にしていたボウガンを発射。
咄嗟にユメをかばったハルヒロが、ボウガンの直撃を受けてしまいます。


幸い致命傷にはならなかったものの、痛手を負ったハルヒロ。
予想外の敵の対処に、パーティの統制はすぐに崩壊し
各々、ホブゴブリンにシホルは魔法、モグゾーとランタは斬撃で挑みますが
いずれも軽くあしらわれます。特に戦士のモグゾーの一撃は
パーティ内で最強の攻撃のはずですが、それですら全く通用しません。


ホブゴブリンの反撃はすさまじく、ボウガンを受けたハルヒロはもとより
突撃したランタもやられ、もはや打つ手は無い状況。
最大のピンチに、ハルヒロはこの世界で初めて、自分の死を強く意識します。


自分たちの判断ミスを後悔する間もなく、死の足音は一行に迫ってきます。
そこでマナトが精一杯の大声で、撤退の指示を出すのでした。


あっけなく崩壊するパーティ。その場から皆全力で逃げ出します。
敵の追撃を振り切れるかどうかわからない状況で、マナトが最後まで
パーティのしんがりをつとめ、持っているスタッフでホブゴブリンの足止めを行います。


マナトにも早く逃げるように呼びかけるハルヒロ。
ようやく、相手がひるんだと思われた隙をみて、マナトも逃げ出しますが…。


そこにホブゴブリンが、何やら投げるタイプの武器をマナトに投げつけます。
苦痛に歪むマナトの顔。どうやら、背中に直撃を受けたようです。


それでも、皆を逃がすべく大丈夫と皆に伝えるマナト。
必死の逃走はどうやら成功したようで、パーティはひとまず振り切ることができました。
皆が少しだけホッとしていると、5人より少し遅れて姿を現したマナト。


皆がマナトの無事を喜ぼうとしたとき、マナトの身体は前のめりに倒れてきます。
何とか地面に激突する前に、マナトを抱きとめたハルヒロでしたが
マナトの背中にはナイフが深々と刺さっており、マナトは大量出血をしていました。
果たして、マナトの運命やいかに…?という最も気になる引きで2巻へと続きます。


こういったファンタジーものですと、主人公が無双するのが通例なんですが
全く以って、義勇兵の中では最弱と思われる状況から始まる、この作品はかなり異質な作品ですね。
また主人公が、変に女性キャラにモテたりだとか、特殊能力を持っているわけでもなく
ハルヒロは平凡な(自身もそう認識しているとのこと)キャラとして描かれています。


ただそれゆえに、本来であれば現実世界よりよほど過酷なファンタジー世界の
日常(?)を描き出していることにも成功しており、普通のファンタジーものとは
違ったリアルさ(ファンタジーものにリアルもクソもありませんが)が楽しめる作品です。
ファンタジーもののテンプレ的展開とは一線を画す作品で、空気も伝わってくるような
緊張感がある作品に仕上がっていて、なかなかオススメの作品ですね。


個人的評価(5段階) ★4





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